日本のスマートシティ事業:サイバーセキュリティとヨーロッパとの提携の必要性

スマートシティの開発は世界中で行われており、更なる飛躍に向けた技術も多く存在している。

7月20日に行われたTrusted Corporation主催のイベントでは、ヨーロッパと日本の融合によって更なるイノベーションの可能性を示唆し、その上で重要な役割を担うサイバーセキュリティについて株式会社ラックとともに対談を行った。

日本のサイバーセキュリティは弱い?

インターネットの普及が始まった1990年代に比べ、近年ではサイバー攻撃者側にとって金銭的利益を得られるものが増加した。近年では、メディアにおいて国際的なニュースの一つとしてサイバー攻撃について大きく取り上げられるようになってきている。

日本はサイバーセキュリティに関する国の予算が少ないが、昨今は企業だけでなく国ぐるみで攻撃されるようになってきている。株式会社ラック新規事業開発部部長 又江原氏曰く「海外と比較すると低いが、近年国内の予算は飛躍的に上がっている。」とのこと。

株式会社ラックは日本国内で初めてサイバーセキュリティのサービス事業を始めた企業である。セキュリティ監視・セキュリティ診断・緊急対応・コンサルティング・教育サービスなどサイバーセキュリティの検知・防御・対策を回すサイクルでサービスを展開し、長く日本におけるサイバーセキュリティの最先端を担ってきた。

25年前は警察にも防衛省にもサイバーセキュリティに関する組織は存在せず、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)もなかった。ただ、サイバーセキュリティは軍事技術の研究として活動している国が多いのに対し、日本は軍事技術研究ではないため、どうしても金額規模が少なくなってしまう。

また、十分な予算があったとしても、それを効果的に活かせる人が日本には少ないのが現状である。

日本のスマートシティの現状:「セキュリティや漏洩防止以前の問題」

スマートシティとは、様々な種類の電子的方法とセンサーを利用してデータを集める都市部のことである。このデータは資産、リソース、サービスを効率的に管理するために使用される。In the Wild とよく言われるのは、街の中に攻撃者がいても、どこをどのように歩いているかわからない状態であるからである。又江原氏はこの状態を「繋がっている相手が誰かわからない少し怖い世界でもある。」という。これから発達していく分野であるため、アナログの中でうまく発展してきた日本国民にとっては、ナンバリングされたうえ、個人情報漏洩のリスクを負うことに対する恐怖心があるので、理解を得るのが難しい状況にある。これに対し又江原氏は「市民の安全を考える際にマイナンバーの普及が大きく左右するが、いかに安全を担保し強制力をもたせるかと、配布の簡易化が先である。セキュリティや漏洩防止以前の問題が日本にはある。」と指摘している。

参考にすべきヨーロッパのスマートシティ法整備

ヨーロッパではシリコンバレーに次ぐ世界で二番目に大きいエコシステムとたくさんのスタートアップ企業が成長している。Trusted Corporation CEO Fariza Abidovaは「ヨーロッパでは環境やセキュリティに関しても法的な拘束力があることから様々な配慮がなされている。」という。

EU一般データ保護規則(GDPR)の元、人々のプライバシーを守ることに関して敏感であることからスマートシティにおける法整備も進んでおり、長期的な見通しを立てて事業を展開しているケースが多い。

こうしたセキュリティの強さが、ヨーロッパの場合、開発した技術の試行が困難という壁となっている。良いアルゴリズムを作成しても試せないことから急成長することができない。

このヨーロッパの法整備のケーススタディから今後日本がとるべき法整備の方向性が見えてくるのではないだろうか。

セキュリティは事業開始の初期段階から

Farizaは日本の大企業から欧州のスタートアップ企業の紹介をしてほしいと言われた際に、彼らがセキュリティ面を気にする素振りはないと言う。しかし、技術を導入する際、また企業同士が提携を組む際にはセキュリティ導入を念頭に置かなければならない。入れてしまってからでは遅いからである。

「一緒に考えることから始めなければ進まなくなってしまう。サイバーセキュリティは10年単位の年月をかけて構築されるものであり、継続的に安全性を観察する必要がある。」と又江原氏は指摘する。

スマートシティ事業では日本・ヨーロッパ間での相性の良さが活かせる

近年日本企業が重きを置く「サステナビリティ」だが、ヨーロッパではすでに長く注目されてきた概念である。ヨーロッパではスタートアップ企業に対する支援が活発であり、長期的な視点で起業するケースが多い。「精度の高いものを求める点やプライバシー保護規制に関しても日本の考え方に似ている点が多々ある」とFariza。

10年単位の事業にとってパートナー選びはとても大切であり、スマートシティを構築する上では十分信頼できるスタートアップ企業を選ぶ必要がある。この観点からすると日本企業とヨーロッパのスタートアップ企業との相性は非常に良いといえる。ヨーロッパのスタートアップ企業はプライバシーセキュリティが厳しいヨーロッパでビジネスを行っているため、日本よりも厳しい規制をすでに乗り越えているという面で安心できる。

一方でヨーロッパの企業は明確な目的や課題を持っており、面白いプロジェクトがあるというだけで情報交換や提携交渉などに簡単に乗ってくることはない。しかし、相互理解と地道なコミュニケーションによって新たなイノベーションが起きる可能性を存分に秘めているのが日本とヨーロッパの関係だといえる。

Trusted CorporationではVCなどから既に投資を受けているポテンシャルの高いヨーロッパスタートアップ企業の情報提供から、実際の交渉における円滑なコミュニケーション遂行のためのメール文面アドバイス、オンラインミーティングでのファシリテーションノウハウの提供に至るまで日本企業とヨーロッパスタートアップ企業のオープイノベーショントータルサポートを行っている。

株式会社ラック及びサイバーセキュリティ全般にご興味がある場合、下記までご連絡ください。

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株式会社LAC
新規事業開発部 スマートシティ事業室長
稲森 伸介

inamori@lac.co.jp
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Director 石橋三枝
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